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「介護」をしない介護施設。【All for One 緑町】

「介護」
そう聞いたとき、あなたはどんなイメージを抱きますか?
「まだまだ先の話」でしょうか、それとも「おじいちゃんやおばあちゃんたちがいるところ」でしょうか。中には「将来は介護されずに、自宅でぽっくりが希望」という方や、もしかすると「介護職は大変らしい」という印象を抱いている方もいらっしゃるかもしれません。

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【「介護」をしない介護。そこに矛盾はない。】

「介護に対する世間のイメージって正直あんまり良くないですよね」
というのは、『株式会社 One for All』の代表、鎌田淳志さん。その真摯な語り口に、筆者は思わず頷きました。
確かに、そうかもしれません。私たちのような若年層の中では、「いつか年を取ったら、介護される前に……」という考えを持つことはそれほど珍しくはありません。
その考えは、現在の介護が世間に与えるイメージに起因しています。

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「それは、≪介護する≫側の接し方の問題なのでは」
そんな疑問から、株式会社One for Allが、『All for One 緑町』(旧名 デイサービスおもてなし)をスタートさせたのは2009年のこと。以来、「介護をしない介護」をコンセプトに、日々試行錯誤を繰り返しながらその規模を拡大させてきました。

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しかし、「介護をしない介護」というのは一体どういったものなのでしょうか。
そんな疑問は、All for One 緑町の玄関をくぐった瞬間にまず「感覚」で晴れやかになりました。
ナチュラルな木材で作られた明るい室内。そして、にこやかな利用者の皆様とスタッフさんたち。
そこには筆者が以前介護施設を訪れた際に感じた、病院を連想させる消毒っぽいにおいの立ち込めるような閉塞感はありません。
伸びやかで解放的、色で例えるならば暖かなオレンジのような、陽の光の差し込む穏やかな空間です。

要介護とされるお年寄りのためのデイサービス施設。
と聞くと、私たちはどうしても「≪そういう≫ところには行きたくないな」と感じてしまいませんか?
それは、根本的な「介護」へのイメージを変えていかなければ拭い去ることができないと鎌田さんは言います。先ほどの≪そういう≫ところというのは≪介護される≫ところ。更に言えば≪介護されちゃってる≫と感じるところです。

例えば、利用者の方をお手洗いへ誘導しようとしたとき。
「○○さん、お手洗い行きましょうね」と声を掛けられている利用者さんを目にしたら、どうでしょう。「あ、あのおじいちゃん介護されちゃってるな」と感じませんか?年を取ったら、まるで子どものように扱われたとしても、「まあそういうもの」。そう思ってはいませんか?
対して、All for One 緑町では、そういった声掛けは行いません。
「○○さん、今お手洗いが空いていますがいかがいたしますか?」
とサラリと教えてくれます。こう聞かれれば、「あ、じゃあ今のうちに行っておこうかな」と思いませんか?

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All for One 緑町では、このように要介護者発信の、いわゆる介護のイメージである「お世話」ではなく、「介助」を行っています。
お年寄りだから、要介護者だからといって、「特別扱い」をしない。それがAll for One 緑町のコンセプト、「介護をしない介護」の軸の一端を担っています。
対等な人と人としての、スタッフと利用者との接し方。本来当たり前であるべき、相手をひとりの人間として尊重したコミニュケーションを行っているのです。

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【生きるチカラを取り戻す】

介護施設を訪れると、利用しているお年寄りたちが一丸となってレクリエーションに取り組んでいる姿を見ることも多いですよね。折り紙やお習字、風船を使ったバレーボールなど。
それを
「子どもの遊びと変わらないじゃないか」
と断じてしまうのは簡単ですが、これらのレクリエーションの本質は、要介護者の機能訓練。
例えば、それまでは肩までしか上がらなかった腕が風船バレーを行うことで、顔の横まで上げられるようになる。それが目的です。

デイサービスというのは、利用者の生活機能を取り戻し、自立支援を行う施設。そのために効果的な多くのレクリエーションがスケジュールに組み込まれています。
しかし、訓練であると知らずにただ一見したとき、「子どもの遊び」と感じてしまうような活動。それは介護へのマイナスイメージに繋がりかねません。
介護施設で風船バレーをしている場面に出くわしたら、先ほど述べたお年寄りへの接し方と同様に、≪介護されちゃってる≫という印象を抱きませんか?

All for One 緑町では、そういった子どもの遊びじみたレクリエーションを通しての機能訓練は基本的に行いません。
とすると、施設の利用者さんたちは一体どのような活動に取り組んでいるのでしょうか。

朝、やってきた利用者さんたちが、まずその日のスケジュールを自分で組み立てるところからAll for One 緑町の1日は始まります。
その内容は、パン作りや米とぎ、昼食の下ごしらえといったお料理から、施設裏手にある畑での仕事、雑巾やティシュカバーを縫うといった手芸などの実生活に即したもの。

多岐に渡るそれらの活動の中で一貫しているのが、「生産物が必ず誰かの手に渡るようにする」ということです。
といだお米や、畑で作られた野菜、下ごしらえをされた食材は、利用者さん、そしてスタッフさんたちのお昼ご飯に。地域の方々からいただいた布で縫った雑巾やティシュカバーは近隣の幼稚園などに。幼稚園の子どもたちに雑巾を届けるときには、折り紙なども一緒にプレゼントし、楽しみを分かち合います。

All for One 緑町で行われている活動には「ありがとう」が返ってきます。これは、モチベーションのアップ、取り組みへの動機付けとして大きな意味を持つのです。
介護施設に対して「なんでこんな子どもの遊びみたいなことをさせられなければならないんだ」と憤るお年寄りの方にも、こういうことならやってもいいかな、と思ってもらえているのだそう。
自分の作った野菜が、下ごしらえをした食材が、といだお米が、みんなの口に入って「美味しい」、「ごちそうさま」と言ってもらえる。地域の方に頼まれて、障子や網戸の張り替えをする。作った雑巾は近所の子どもたちの手に渡り、役に立っている。
そうした「社会の一員としての役割を全うしている」という感覚は、本質的には同じ意味を持つ機能訓練であっても風船バレーでは味わうことはできませんよね。

All for One 緑町で行われている数々の活動の中で、しばしば注目されるのが「石窯でのパン作り」です。確かに、本格的な石窯で焼き上げるパン作りは他の施設では体験することのできない取り組み。
「All for One 緑町なら、美味しいパンも焼けますよ」そんな風に紹介されることも多いのだとか。

お料理が好きなおばあちゃんが利用するデイサービス施設を探すとき、「ここはパンを焼くことができて、きっと楽しいですよ」といった風にオススメするというのは、わかりやすく、キャッチーです。
しかしそうした言い方は、例えば「あの施設にはプールがあるんですよ」というのと全く同じで、目立った施設設備や活動内容といった目に見える特徴だけに目を向けたものでしかありません。All for One 緑町で行われている「パン作り」の本質は別のところにあります。

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先ほどから述べている通り、All for One 緑町で行われている活動は、全てに動機・目的・役割・還元の要素が盛り込まれています。ただ楽しいからとパンを焼いているわけではないのです。
生地を捏ねることで手先の器用さを培い、そして出来上がったパンを家族に持って帰り、「美味しい、ありがとう」という言葉を受け取る。その言葉が動機となって、「またパンを焼こう」と思うーー。
パン作りは人気のアクティビティであり、確かに非常に楽しい活動です。しかし、それは単なる「楽しみ」から行われる行動とは根本的に異なっています。

そうは言っても、私たちが介護施設を選ぶとき、選択肢となる施設の多くはいわゆる「介護」を行うところ。本質はどこも一緒と言わざるを得ません。プールの有無、お出掛けの頻度といった、設備や日々の活動内容といった表層的な違いのみで比べる他ないのが現状なのです。

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現在、多くの介護施設が日本全国に存在しています。しかしいくら数があっても、利用を希望する要介護者の方にとって、本当の意味での選択肢というのはほとんど存在していないという状況に鎌田さんは疑問を呈します。
All for One 緑町がどんな施設か知ろうとしたとき、一見「パン作り」をはじめとした、他にはない活動内容に目を奪われがちです。しかし、その真意は利用者の方が施設での生活の中で生きるチカラを手に入れ、本当の意味での豊かな人生を支えること。

たとえ今ではなかったとしても、私たちがいつか介護施設を選ばなければならない状況になったとき。表面的な特徴ではなく、それの持つ本質的な目的と、その施設ごとの違いを判断基準としていきたいものですね。

【All for One 緑町で働くということ】

そんな、介護業界に新しい風を吹き込むデイサービス施設『All for One 緑町』。今回、こちらで働くスタッフさんに、こちらで働くきっかけをはじめ、様々なお話を伺うことができました。
インタビューに答えてくださったのは、今年の3月から働き始めた介護スタッフの田中さんと新卒で入社した中川さんのフレッシュなおふたりです。

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ーまずは、All for One 緑町で働こうと思ったきっかけを教えてください。

中川さん
「今年の春に高校の福祉科を卒業したのですが、当初は福祉の仕事に就こうとは思っていませんでした。でも、せっかく資格(介護福祉士)を得ることができるとのことだったので……
ただ、いわゆる≪介護≫っていう施設は嫌だなと考えていたとき、高校の先生にこちらを紹介していただきました」

ーなぜ、そういった施設は嫌だったのですか?

中川さん
「そういう施設って、なんとなくカタいというか……病院に入院している、みたいなイメージがあって。施設は利用者の方にとってはおうちみたいなものですから、もっとリラックスしていただけるようなところが良かったんです」

ーなるほど……。田中さんはいかがですか?

田中さん
「ここに来る以前ですが、2年2ヶ月ほど病院の終末系の病棟で介護の仕事をしていたことがあるんです。そこでは医者や看護師、介護士が働いていたのですが、患者さんとの距離が遠かったんですね。患者さんとお話をしているとサボりだと言われてしまって……。患者さんの最期の声を聞くのが仕事だと思っていたので、それを認められないというのは嫌でしたね。仕事自体も作業といった感じで、それも違和感でした」

ーそれで、こちらへ移ったのですか?

田中さん
「いえ、その後は他のデイサービス施設に移動しました。ですが、そこでは介護者が優位で、利用者の方を≪見てあげてる≫というような状態で。命は同じなのに、といつも感じていました。わたしは無資格でしたし、もう介護の仕事は辞めようと思いましたね。
でも、そのときの上司の方に相談したら「もう少し続けてみたら?」と。それで、初任者研修を2月に受けて、ここに来ました」

ーAll for One 緑町と他の施設の違いを感じる点はどんなところでしょう?

田中さん「やはり利用者さんの自律に重きを置いている、という点ですね。利用者さん本位というか。
言葉遣いや態度ひとつとっても、今までいた施設とは全然違います。形ではなく心がけが違うんです。この間なんて、「〜ね」禁止令を出されてしまって」

ー「〜ね」禁止令?

田中さん
「わたしたちがどうしても利用者の方に話しかけるときに「〜ね、〜ですね」と言ってしまうので……。この言い方は見下しているように聞こえてしまうので。本当はこういったことはあまりしたくないのだけれど、と代表には言われましたが、どうしても出てしまって」

中川さん
「そうなんですよ、気をつけてはいるのですが……ついつい」

ーそうなんですね。他に気をつけていることはありますか?

田中さん
「そうですね……、落ち着いて働くということでしょうか。まだ新人で、毎日がわからないことの連続なんですが、わたしたちが落ち着いていないと利用者さんも落ち着けないと思いますから」

ー確かにそうですよね。では、All for One 緑町で働き始めて、いいなと思ったことはなんでしょう?

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田中さん
「利用者さんたちと一緒に食べるお昼ご飯でしょうか。本当に美味しいんです」

中川さん
「そうなんです。≪施設のごはん≫という感じは全然しませんよ」
田中さん「みなさんがお米をといでくださったり、下ごしらえをしてくださったりしたものを一緒に食べられるというのはやっぱり嬉しいですね。ぬか漬けなんかも仕込んでくださって」

ースタッフさんも一緒にお昼を食べられるのですね。

田中さん
「はい。お味噌やお醤油も施設で作っていて、とても美味しいです」

中川さん
「桜もちや柏もち、蒸しパンといったおやつも手作りなんです」

田中さん
「利用者さんのお誕生日には好きなお菓子のリクエストを受けたり……。美味しいものは源ということで、こだわっています。
ご飯以外では、利用者さんとスタッフの距離が近いというのも素敵です。……中川さんは利用者さんたちのアイドルなんですよ(笑)」

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中川さん
「ええー(笑)」

ーお孫さんみたいで可愛いんでしょうね(笑)。

田中さん
「そうなんですよ。中川さんがいるとみなさん笑顔なんです」

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このように、働くスタッフさんたちもやりがいと希望を見出し、ひいては豊かな人生に繋がる職場であるAll for one 緑町。

今は、私たちにとって介護は「まだ先の話」かもしれません。しかし、いつか考えなければならないときがほとんどの方にやって来るはずです。そのときには、All for One 緑町の「介護をしない介護」という新たな観点を思い出してください。

「このシステムは今はここだけですが、これから静岡全体に、そしてもっと外へ広げていきたいですね」
と語る鎌田さんの瞳には、確かな情熱が灯っていました。

私たちが介護を必要とする頃には、All for One 緑町のような施設が増えているかもしれません。
介護業界の未来は、若く力強い意思で明るく照らされています。

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【事業所詳細】

会社名:株式会社One for All
事業所名:All for One 緑町
所在地:静岡市葵区緑町5-25
営業日:月曜~土曜(祝祭日含む)
営業時間:8:00~18:00
休業日:日曜日・年末年始
ご連絡・お問い合わせ先窓口:054-200-7707(担当:鎌田・佐野・市川)
MAIL:oneforall@aqua.plala.or.jp