静岡スタイルは、静岡クレールに新しく変わりました!

保存と再生、そして創造 古民家再生シティアート

カフェ、レストラン、ペンション、ギャラリー。
今や、居住用だけでなく、オシャレな店舗としても注目されている「古民家」。文字通り古い民家と言ってしまえば確かにその通りである古民家が、現在各所でスポットライトを浴びています。
「新しいものばかりではなく、古きを尊ぶ。積み上げられてきた年月を感じる」という風潮が如実に現れている古民家ブーム。そのムーブメントは、ここ静岡にも。

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【古民家を愛して】

今回お話を伺ったのは、「永く愛せる家を作る」をモットーに、他のどこにもない自分だけの家作りから古民家再生までを請け負う『有限会社シティアート』の設計工務主任である林さん。
林さんの言葉の端々からは、古民家への想いが伝わってきます。

まず、古民家というのはどういった家のことを指すのでしょうか。イメージはあれど、具体的な定義というのはなんとなくふんわりとしてはいませんか?
林さん曰く、実際古民家の定義というのは、築100年以上や昭和初期までに建てられたものなど、曖昧なのだそう。そこで、シティアートでは「筋交い(すじかい)の入っていない、伝統構法で建てられた住宅」のことを古民家と呼んでいるのだそうです。

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筋交いというのは、柱と柱の間に斜めに入れて建築物や足場の補強をする部材のこと。建築現場などで、柱と柱の間に木材がバッテンに張られているのを見たことがあるかと思います。それが筋交いです。
筋交いを入れガッチリと壁面を固めることで、地震など外部からの衝撃に耐える、現在主流の在来工法とは異なり、伝統工法では貫と呼ばれる水平材で柱通しを繋ぐ通し貫で組み立てられており、柔らかな土壁と合わせて揺れを吸収するのです。現在で言うところの、免震構造ですね。

昭和25年に制定された建築基準法では、一定の割合で筋交いを使用することが義務付けられていますので、伝統工法で建てられた家というのは、大雑把に言って築100年前後、どんなに新しくとも築70〜80年程度までということになります。(3階建て以上の場合は、大正8年制定の市街地建築物法に定められる)

林さんによると、そうした築100年を迎えた建物というのは、現在日本には20〜25万棟ほど現存しているといいます。そのうち、毎年1万棟ほどが取り壊しや建て替えなどで消滅しているのだとも。

シティアートも、以前は大手住宅メーカーの下請けとして古民家を取り壊し、鉄骨の建物へと建て替えてきました。
その際に「なんてもったいない」と感じたことが、現在の古民家再生事業へと繋がったのだそう。
もちろん、築100年も経った住宅を全部残すというのは非常に難しいことです。

「全部を残すことは無理でも、何かできないだろうか…」
古民家というのは、現在では使うことのできない木材を使って建てられています。シティアートでは、そうした建材、建具だけでも残すことにしました。
古民家の解体前に持ち主に連絡し、買い取るということを続けて、今では、東海4県で1番の古民家建具在庫を誇っています。

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そうした梁や柱をはじめとした建材、建具は、バラの在庫として古民家再生の際に足りないものの補填に使われ、また、古材を使用したオーダー家具としても販売しているのだそう。
古民家に使用されていた古材は、古くなった表面を削ぎ落とし、製材してやると中から真っ白な木肌が表れます。それを家具として組み立ててから、天然素材の塗料でまた風合いを出してやるのだそう。

また、古い建物を解体する際に、持ち主の方から「大黒柱は残して欲しい」というような依頼を受けることもあるのだそう。
以前そうしたオーダーを受けた際には、大黒柱を希望であるベンチに作り変えました。
長年暮らした家の一部を、家具に変えてまたともに時を過ごすことができるのです。

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【古民家で「暮らし始める」ということ】

静岡といえば、江戸時代から続く街道「東海道」が東西に通り、由緒ある宿場町が多いことでも知られています。しかしその歴史とは裏腹に、かつての宿場町の姿を残している中山道沿い等に比べ、古い町家などの古民家がほとんど残っていないのだそう。
そのため、静岡で現存している古民家というと、そのほとんどが中山間部に位置しています。

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シティアートが本社、そしてギャラリーとして使っている家屋も、元は岡部町に建っていた築200年の古民家なのだそう。その間取りを改造し、新築した部分を継いで現在の形になっています。
古民家というのは、建てられた当時の生活に沿った伝統的な間取りとなっています。そのため現代に生きる私たちがそのまま暮らすとなると、生活に不便を感じる場合も。
これは、古民家に暮らしたいという人にとってネックのひとつとなる部分です。

シティアートは、古民家の補修はもちろん、改築もお手の物。
「古民家は、柱が少なく、その場所も決まっているんです」
という林さん。その柱の位置を考えながら改築していきます。
土間のスペースを狭めて玄関ホールを作りたい、部屋部分はそのままにしてきれいな廊下をつけたい、部屋を増やしたい、というような要望に応える改造、そして気になる地震対策も万全です。伝統構法で作られた古民家の構造を計算し、金物で揺れを軽減させることができます。

先ほど、その「つくり」自体が古民家移住のネックのひとつだと述べました。
それ以外にも「古民家に興味はあるけれど……」という人が二の足を踏んでしまうポイントが、古民家のある山間部に暮らしたら通勤に支障が出ないだろうかという不安、そして実際に古民家に住もうと思っても、なかなか物件を見つけられないということではないかと思います。

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「古民家に住みたい、っていうのは若い方が多いんですよね」
シティアートでは、中山間地域に残る空き古民家とそこに住みたい若者を繋いでいきたいと考えています。古民家を残していくため、空き家を減らしたいのです。
実際に、現在は清水の和田島地区に移住したいという方を探している最中なのだそう。
古民家に住みたい、という方だけではなく、漠然と田舎暮らしをしたい、という方もぜひシティアートに相談してみてください。

ということで、古民家暮らしを悩む人向けに、林さんにお話を伺いました。
「中山間地域って言っても、バイパスまで車で15〜20分くらいだったりして、交通の便はそこまで悪くないんですよ」
確かに、国道1号バイパスまで出てしまえば、静岡市や藤枝市などへのアクセスは非常に悪いというわけではありません。自家用車を持っていれば、市街地への通勤通学に掛かる時間もそれほど苦にならない程度ですね。
「とりあえず住みたい、という場合なら、家賃2〜3万円なんていう物件もありますよ。1年前までは人が住んでいたから、すぐ住めるおうちや、管理してくれる代わりに好きにしていいなんてのもありますね」
古民家暮らしに興味のある方は、予算なども含めてケースバイケースかと思われますので、とりあえず相談して欲しいとのこと。

【保存と再生、そして創造】

シティアートでは、取り壊された古民家から買い取った古材に新しい息吹を吹き込み、家具などの新たな製品へ生まれ変わらせています。先ほど触れた、大黒柱のベンチはその一例でしかありません。

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林さんが、その中でもオススメのものを紹介してくださいました。
それが、古材と型紙を使用したランプ。
「型紙」というのは、染色屋さんが布地を染める際に使用する、染柄の彫られた紙のこと。美しく染め抜かれた反物や仕立てられた着物は目にしたことがあるかと思いますが、柿渋で補強されたこの型紙を見たことがあるという方はそれほどいらっしゃらないのではありませんか?

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美しい模様の施された型紙はひとつひとつ同じ柄がなく、それぞれが異なる魅力で目を惹きます。 そこに魅了され、シティアートはたくさんの型紙を仕入れたのだそうです。
実はこの型紙、近年脚光を浴びているそうで、染めの本場である京都の「京型紙」と呼ばれるものなどはオークションで1枚数万円もの値が付くこともあるのだとか。

「これを何かに使えないか……」
と考えて出来上がったのが、このランプ。

型紙を古材で作られた台にくるりと巻くようにセットすると、実に雅やかな光の漏れ出るランプシェードとなるのです。
同じものがふたつとない型紙たちから、「これだ」というものを選び、自分だけのランプを手にすることができますよ。

これから売り出していく予定だということランプは、7000円(税抜)くらいで販売する予定とのことで、思いの外安価となっています。
まさに、保存してきた古いものを再生し、新たな価値を創造する、シティアートならではの製品ですね。

さて、いかがでしたでしょうか。
元々古民家に興味を持っていたという方はもちろん、これまではあまり気にしていなかったという方も、ぜひ1度シティアートへと足を運んでみませんか?
古いものを、古くなったからというだけで捨ててしまうというのは、現代では極々一般的な考え方です。しかし、この懐かしいような古い木の香りで満たされた場所では、きっとちょっとだけ違う想いが生まれるはずです。

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【有限会社シティアート詳細】

住所:静岡市葵区千代1丁目17-14
TEL:054-278-0301
公式サイト:http://www.cityart.jp/