静岡スタイルは、静岡クレールに新しく変わりました!

静岡随一の隠世【遊菜巧房 岩市】

【今宵、隠世の美食で、秋を待ち受けて】

静岡鉄道新静岡駅から清水方面へと続く北街道沿い。昼夜問わず人通り、車通りの多いこの通りから、薄い暖簾1枚を隔てると、打って変わって大人の雰囲気たっぷりの木製の格子戸が。静岡随一の隠世『遊菜巧房 岩市』へ私たちを誘う扉です。
ともすればうっかり見落としてしまいそうなひっそりとした佇まいは、まるで世を忍ぶよう。

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そっと引き戸を開ければ、ふわりと甘い香りが漂うあがり口が。
千利休が愛した色である黒で統一された空間は、質素ながらも奥深い高貴さを感じさせます。
脱いだ靴を靴箱へしまい、カウンターと座敷のテーブルが据え付けられた店内へ。まるで侘数寄の茶室のような落ち着いた空間には、カウンターに6席、テーブルに14席が用意されています。
活けられているのは季節の花。筆者たちが訪れた際には大ぶりの百合が優しい香りを漂わせながら、瑞々しい花弁を広げていました。
聞くと、百合の中では芳香の少ない品種なのだそう。

洗練された「和」の空間で私たちを待ち受けているのは、店主藤浪さんの手による珠玉の「和食」。
口に入れた瞬間に幸せをもたらす美味しさはもちろん、季節を感じる美しさも兼ね備えています。更に、カウンターのすぐ向こう側で仕上げられる料理の放つ食欲をくすぐる香り、そして調理に際する小気味よい音。まさに、五感で堪能する懐石料理です。

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【季節は美しく、香り高く、そして美味しく】

岩市のメニューにはその時期に合わせた和の料理が数多く並びます。その中でも、人気が高いのは月替わりコース(5000円)。
前菜、椀、刺身、焼き物、揚げ物、煮物などをその時々の食材に応じておまかせで提供してくれ、そして締めには蕎麦が用意されています。

今回、ご紹介くださったのはこれからやってくる秋をイメージしたコース料理の数々。

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まず前菜として、合鴨ロース煮と栗のカステラを。風味を活かし、口の中いっぱいに染みた味の広がる鴨は柔らかな口当たり。ふわりと甘いカステラはしっとりとして、それでいて舌の上でホロリと崩れます。このカステラは、岩市でしか味わうことのできないオリジナルの一品です。

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焼き物は、秋鮭の山椒焼き。紅い身の美しい新鮮な鮭の切り身を、特製のタレにくぐらせ、焼き上げた後に香り高い山椒の粉を振って仕上げられています。このタレというのが、天然の魚の骨を焼いてからじっくりと出汁をとり、醤油、酒、味醂でことこと炊いた、手間暇のかかった絶品。魚タレと呼ばれるこの特別なタレが、秋鮭に螺鈿の如き照りと輝きを生み出しているのです。
一度頬張れば、鼻に抜ける爽やかな山椒の香りと甘辛いタレ、そしてひと口噛むごとに鮭の旨味が溢れ出てきます。

一際目を引くのは、揚げ物である「桜海老真薯(しんじょ)のいが栗揚げ」。万願寺唐辛子が添えられています。
真薯とは、海老や蟹、白身魚などのすり身を蒸したり、茹でたり、揚げたりした日本料理のこと。和食ではメジャーなこの料理ですが、岩市では「秋」を感じさせる工夫が凝らされています。
静岡名産の桜海老を用いた真薯、その表面に抹茶素麺を衣として付け、それを揚げます。すると、素麺の1本1本がトゲトゲとした様子を演出し、まるでいが栗のような見た目に仕上がるのです。栗は秋の味覚に欠かせない木の実。
本物の栗そっくりのこの揚げ物には、季節感を作り出したいという岩市の、和食の随が凝らされているのです。

小鉢に入れられた「茄子とオクラと里芋の揚げ浸し」は、丁寧にとった出汁がたっぷりと掛けられ、贅沢な一品に仕上がっています。
色味の美しい茄子やオクラは、ひと口毎に染みた出汁がじゅわりと広がります。
今や年中出回っている里芋は、ねっとりとした食感を楽しめる海老芋を使い、柔らかながら他の食材とは全く異なる口当たり。
色鮮やかな茄子、オクラと純白の里芋が美しい小鉢です。

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また、和食ならではの刺身はその時々で最も良いものを。我々の前にその美しい身を晒すのは、トロの鮪と銀色に輝く太刀魚。
舌の上でとろけるトロと、湯引きすることで眩しいほどの美しさを保った太刀魚は、ギュッと敷き詰められた氷の上で箸に持ち上げられるのを待っています。
添えられているのは、辛味、甘味、そして爽やかな風味を全て備えている有東木のわさび。
滑らかな刺身の旨味を余すことなく引き出し、口の中で膨らませる、藤浪さんこだわりの名脇役です。

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これらを始めとした絶品の和食たちに加え、多くの人がこぞって注文し、大切な人とシェアするのが「黒毛和牛網焼き(2500円)」。
「普通なら、とてもこの値段では食べられない」
というお肉は、A4ランク黒毛和牛のサーロイン。最近よく耳にするA5ランクに比べると、ひとつだけ劣るとされるランクのお肉ですが、必要以上に脂が乗っている印象の強いA5に比べ、脂身と赤身のバランスが良く、食べやすいのが特徴です。
「A4ランクの中で質が良いものを選んでます」
という藤浪さんの言葉通り、くすみのない赤身に真っ白な脂身のサシがきめ細やかに入っており、見ただけで頬がとろけそう。
このお肉を網焼きにするのですから、焼く前から間違いなく美味しいとわかってしまいます。

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藤浪さんの手によって、丁寧に火を入れられた牛肉は、例え歯が弱ってしまったお年寄りでも難なく噛み切れると思えるほどの柔らかさ。むしろ、舌の上で脂身と一緒にとけてしまうのではないかと思えるほどです。
その食感、味はまさに感動のひと言。
たった2500円でこれだけのお肉を味わえるというのは、夢でも見ているかのような心地です。

【美味なる料理と日本酒で、和食の粋を満喫】

和食とは、多様で新鮮な、旬の食材の持ち味を最大限に活かし、自然の美しさや季節の移ろいを表現する料理。そうした食事を楽しむ日本の文化は、ユネスコの世界遺産にも登録されました。
天ぷらや蕎麦などといったものも、和食のうちの1ジャンル。

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「うちは、和食なんだよね」
と藤浪さんが言い切るように、岩市は「和食」であることに重きを置いています。
これまで、なんとなく敷居の高さを感じて和食をお店で食べたことのない方もいらっしゃるかもしれません。
リーズナブルな価格で、和食の粋を尽くした料理に舌鼓を打てるお店、『遊菜巧房 岩市』。

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お料理はもちろん、日本全国から集められた日本酒たちがその味わいを膨らませ、特別な夜に彩りを添えます。地元静岡の地酒、「初亀べっぴん」や「臥龍梅」をはじめ、このあたりではなかなか見かけない銘酒「飛露喜」や、ソムリエが作った白ワインのような清酒「仙禽」など日本酒好きでなくとも興味をそそられるこだわりのラインナップ。
和食には、やはり日本酒が良く合います。

華やかなフレンチやイタリアンもいいけれど、季節の移り変わりを肌で感じるこんな時期には、しっとりとした和の心に触れてみませんか?

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【遊菜巧房 岩市 詳細】

住所:静岡県静岡市葵区沓谷3-4-22
TEL:054-293-4151
営業時間:11:00〜14:00、17:30〜22:00
定休日:月曜日、第3火曜日
駐車場:5台