静岡スタイルは、静岡クレールに新しく変わりました!

人と人とを絆ぐオーダー家具店【金鱗】

あなたはこれまでに、『家具』を買ったことはありますか?

ひとり暮らしを始めるときだったり、家を建てるときだったり、家具を購入するというのは一大イベントです。それに、家具というのは安い買い物ではありません。目一杯こだわりたいものですよね。

そんなとき、どんなお店に足を運ぶでしょうか。町の家具屋さん?オシャレなインテリアショップ?それともデパートの家具コーナーでしょうか。
どこも、こだわりのある商品が並んでいることと思います。しかし、あの部分がもう少しこうだったらな……というちょっとした不満を抱いたことはありませんか?

今回は、こだわりの極致である「手造りオーダー家具」の工房兼店舗『金鱗』をご紹介します。

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【「一生モノ」と向き合う場所】

かつて東海道の宿場町「丸子宿」として、旅人たちを癒したとされる地、丸子。現在でも、当時から続くとろろ店「丁子屋」や、工芸体験のできる「匠宿」などがあり、また静岡の街中からそれほど遠くないということもあって訪れる人の足は絶えません。
国道一号線で安倍川を渡り、国一バイパス丸子インターへと通じる道すがらに『金鱗』はあります。一見するとそれほど大きくない木造家屋といった風情で、一体何のお店なのか、いや果たしてお店なのか?と思わせるような外観。しかしそこには『手造り家具の金鱗』としっかり看板が掲げられています。
そう、この建物こそが金鱗のショールームなのです。分かればなるほど、外観からも木材の暖かみと安心感が伝わってきます。

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ところで、この『金鱗』という屋号。少し不思議な名前ですよね。
これは、現在の代表である石川さんのおじいさま、彫刻師だった金鱗の初代が駿府城の天守閣にかつてあったとされる金の鯱(しゃちほこ)からイメージしてつけられたのだそうです。空高く金色に輝く鯱の名というのは、ロマンと意気込みを感じます。

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さて、そんな金鱗のショールームに一歩足を踏み入れるとそこには大小様々な家具たちが並んでいます。全てが作り手さんたちによるもの。
胡桃、栗、楢、山桜、かば桜、ウォールナット……、と素材となった木材ごとに配置されているそれらは、きちんとした作り手さんの誠実さを伝えてきます。

もちろんショールームに並ぶ家具を購入することもできるのですが、メインは特注のオーダー家具。お客さんと話をしながら、その都度要望にピッタリのものを作って納品します。

金鱗フロアギャラリー

注文を受けるとき、まず最初に決めるのが「木材」です。それはお客さんが好きなものであったり、ライフスタイルに合ったものであったりと様々。
例えば、小さなお子さんのいらっしゃるご家庭でテーブルを作りたいけれど、ちょうどテーブルの高さがお子さんの身長くらいでぶつかってしまわないか心配……という場合には、ちょっとぶつかったくらいでは怪我をしにくい柔らかな木を。柔らかい木材というのはもちろん傷もつきやすいですが、その傷もきっと「思い出」になります。
「それに、傷を直したいってんなら削ることもできますから」と話す石川さん。その言葉には、お客さんに家具を長く使って欲しいという気持ちが滲んでいます。

なぜ木から選ぶのでしょうか。石川さんに尋ねてみると、
「後で嫌になってもらいたくないからね」
という答えが。

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デパートや家具屋に並ぶ家具たちは作り手の顔が見えない、誰が作ったかわからないものがほとんど。例えばニトリで買った家具がイマイチお部屋にしっくりこなくて嫌だな、塗装が剥げてきて嫌だな、と思ってもそのものが気に入らないというだけ。
しかし、金鱗の家具はそうではありません。

どんなものが欲しいのか、サイズはどうするか、と顔を付き合わせて話をし、そしてその作り手さんが作り上げたものを家まで運び込む。どうしても、家具とそれを作った相手の顔はワンセットです。
だからこそ、嫌になって欲しくない。後悔して欲しくないのです。

そのためには、やはり木から選ぶのが一番なのだそう。先ほど述べたように、木を選ぶ決め手になるのは「理由」です。

選べる木材の種類・特徴はこちらから

理由があれば、後から嫌になることはないのだと石川さんは話してくれました。
お客さんと会話をしながら理由を引き出すというのも、石川さんたちの大切な仕事。金鱗の家具は悩むところからスタートするのです。

こう聞くと、どんな家具を作ってもらうか発注するだけで膨大な時間が掛かるのでは……と少し心配になってきます。
しかし、意外にも、ショールームを訪れてから、早ければ1時間ほど話して、その場で注文するお客さんが多いのだそうです。もちろん、中には一度冷静になるためにまた後日来店する方もいらっしゃいます。

「今日は一旦帰んな、って言っちゃうんですよ。本当は冷静になる時間を作っちゃいけないんでしょうけどね、販売の目で見たら。でも決定率は結構いいんですよ」という石川さんの言葉通り、お客さんとの会話から家具のスケッチを描いて、その上で後日という場合は三分の一ほどの割合で注文が入るとのこと。

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一生付き合える家具に出会って欲しい。その想いが、金鱗の作り手さんたちの中には強く灯っています。
もし、ショールームを訪れたお客さんが「どうしよう」と悩んでいるようならまず声を掛けてみる。その中で、他の家具屋を回ってきた際の疑問があればそれに答えを出すということもあります。販売専門の家具屋と違い、作り手とお客さんが直接話せる金鱗だからこそできることです。それも、お客さんと家具との出会いをサポートするため。

手造りのオーダー家具と聞くと、注文してから家に品物が届くまでに時間が掛かるのでは思われる方もいらっしゃるかと思います。金鱗の家具が完成するまでに要する期間は大体ひと月からひと月半ほど。意外と早いと感じるのではないでしょうか。
しかし、妥当な時間だと石川さんは語ります。家具というのは「作品」ではありません。ひとつに2、3か月掛けてしまう作品となると、それに掛けた期間の分だけ、色々とプロモーションをして価値を上げてから販売しなくては元が取れないのだそうです。

【オーダー家具が出来るまでの流れ】

ご見学
立ち寄り感覚で、金鱗の様々な作品を気軽にご覧下さい。
広い店内には数十点の手作り家具が並んでいます。
また、気に入った商品があれば、お買い求めも出来ます。

ご相談
『こんな家具は出来ないの?』
『金額はいくらぐらいかかるの』など、どんなご相談やご質問もお気軽にお申し付け下さい。

スケッチ・見積もり
気に入った家具や木材が見つかったら、スタッフがスケッチと見積りを出します。

制作
デザインが決まったらいよいよ制作の開始です。

材料
図面を作った後、厳選された材料の中から家具に最適なものだけ選び出します。

断裁
手慣れた職人の手で、材料が正確に切り出されていきます。

研磨
板の表面も丁寧に研磨されていきます。

仕上げ
熟練の職人が心をこめてカンナで仕上げます。

組立
ほぞと呼ばれる連結部分も寸分の狂いもなく作り上げ、組み立てられていきます。

納品
お客様が選んだ木材が、希望通りに仕上がります。

お客さんに使ってもらう「道具」である家具。できるだけコストを抑えて作るには、あまり悠長に作ってはいられないという面もあります。
それに、注文する私たちの視点から見ても、あまり長い期間が掛かってしまったら待ちきれませんよね。

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ここで多くの方が気になっているのが、おそらく「お値段」ではありませんか。金鱗の公式ホームページを見ても、製作品は載っていますが価格は記載されていません。だいたいどれくらいかだけでも知りたい……。
思い切って石川さんに予算のおおよその目安を尋ねてみました。その答えはというと、
「目安は言えないですね」
とバッサリ。
理由を聞いてみると、素材となる木材の種類はもちろん、等級、更には作り方によっても値段に大きな振れ幅ができてしまうため。

金鱗フロアギャラリー

例えば、と石川さんが示したのはショールームの一角にある大きめのタンス。
「これなんかはこだわり過ぎちゃって高いんですよ」
詳しく聞いてみると、使用した木は楢の等級も良いもの。造りも凝っています。引き出しを真ん中で分けるタイプにすると、強度が必要になるため必要な材木も多くなってきます。また、デザイン性を求めて使った板も厚みのあるもの。
これをもし、もっと安い材木で作ったら、簡素なデザインにしたら、とすると全く価格が変わってくるのだとか。

家具屋であれば、サンプルを出して、この素材であればいくら、このデザインにするならいくら、とお客さんに提示することも可能です。しかし、一から全てをオーダーで請け負う金鱗ではそういった売り方はできません。
そのため、ホームページに予算の目安というものは掲載できないのだそうです。
もちろん予算に応じて製作することもできますので、少しでも気になったら、直接確かめ、相談して欲しいとのこと。

とはいえ、金鱗の家具は特注ということもあり、ショールームに並ぶ家具の値札を見ても安い買い物ではありません。しかし、生涯のアフターケア込みの値段と考えて欲しい、と石川さんは話します。お客さんが家具を使い続ける限り、金鱗では不具合や傷への対処などを無料で行ってくれます。

また、家具を注文する際の代金を先払いの方がいいか、内金を入れた方がいいか、と悩む方もいらっしゃいます。しかし、石川さんはそんなとき「いいよいいよ、納品のときで」と笑うのだそう。
「やっぱり、届けたとき、みんなが笑顔になってくれてそれで「ありがとね」って代金をくれたらそれが一番だからね」
まさに「ニコニコ現金払い」。どんな仕事でもそうですが、お客さんの笑顔が一番嬉しいのです。

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【木材と、作り手は会話する】

ショールームの裏手に回ると、そこは作り手さんたちの工房になっています。
まず目に入ってくるのは、積み重ねられた材木たち。丸太からスライスされたそれらは、静かに家具となり使われる時を待っています。

金鱗フロアギャラリー

金鱗で使われる木材は、全て一本丸ごと丸太買いしてきたものです。材木の産地は東北や北海道など様々。アメリカ産の胡桃であるウォールナットはカナダ等から買い付けています。
木の種類、等級などから選ばれた丸太は、付き合いの長い材木屋さんを経て、金鱗へとやって来るのです。

「丸太は切ってみて初めて当たり外れがわかるんです」というのは若手の作り手、平野さんの言葉。確かに、丸のままの材木は外からではおいそれと中身の状態を知ることはできません。
石川さんは「まあ、あんまり大外れだったら材木屋さんに言うけどね、使えないよ!って」と笑いますが、当たり前すぎて忘れがちな「木も生きている」という事実を突き付けられるようなエピソードです。

また、材木を切ってからも何かと手間が掛かります。まずは木の持つ「毒味(アク)」を抜いてやらなければいけません。また、保管の際も乾燥しすぎて割れてしまったりしないよう、細心の注意が必要です。
家具になる前の材木たちへも、作り手さんたちは惜しみなく心を砕いているのですね。

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さて、まずは木工の現場へお邪魔してみましょう。
金鱗の工房に並ぶ機材は、ほとんどが手動のもの。手作業で作られる家具は、まさに「手造り」です。
板をまっすぐに切る、それだけでもなかなか大変な作業。しかし、金鱗の作り手さんたちはそこまで複雑な造りではないものならば一日で切り出しから組み立てまで行ってしまうという熟練の職人揃い。

そうしてできたものを今度は、木が元々持っている色合いを活かしながら油で塗装していきます。お客さんの要望によっては顔料で風合いを出す場合もありますが、基本的に塗っていくのは植物から抽出された油、ヒマシ油やアマニ油のみ。これらは常温で固まる油で、特にアマニ油は口から摂取することで体内の油分を固めて排出することができるとダイエット用としても使われています。

こうした作業の中で、作り手さんたちはまるで会話をするようにまっすぐ木材に向かい合っています。それぞれが担当する家具を迷いなく製作していく姿からは、プライドと情熱を感じました。

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【地域を支える産業、そして誇りと笑顔】

ご存知の方も多いと思いますが、静岡は日本でも有数の家具の産地。その歴史は古く、徳川家康が駿府に浅間神社を建立したときまで遡ります。その際に家康公が連れてきた職人たちが、現在まで繋がる地場産業としての家具作りを栄えさせました。

そんな静岡に生まれ、工房を構える石川さんの瞳には確かな誇りがあります。
「お客さんに確かな理由があるなら、どんなものだって作りますね」との言葉通り、金鱗の請け負う仕事は多種多様。個人宅向けの特注家具はもちろんのこと、店舗で使うものや、オーダーメイドの扉、さらには木を使ったリフォームまで。

「こういうものが欲しい!」という強いイメージがあれば、それを余すことなく伝えて欲しいと石川さん。どんなものかさえわかってしまえば、それを形にする方法というのは、作り手さんたちが考えてくれます。

これまでに注文を受けたものの中で、変わっていると言えるものは、まるで忍者屋敷のような階段箪笥です。江戸時代などに存在していた狭くて段差が急な階段箪笥と違って、段ひとつひとつの奥行きは広めに取り、普段使っている階段と同じようなサイズ感を実現しました。
これは、言うのは簡単でも実際に作るとなると普通のものよりずっと手間が掛かります。
このように、金鱗はお客さんとの要望を叶えてくれる場所なのです。

そんな金鱗、そして石川さんから特に伝えたいメッセージがあります。それは、
「静岡で暮らすために家具を買うのなら、静岡のお店で買って欲しい」
というもの。
これは、金鱗で作っている小冊子にも書いてあることです。

静岡は家具作りの盛んな地ですが、それでも、段々と規模が縮小しつつあります。この問題は現在多くの地場産業が抱えているもの。
家具の作り手であるメーカーが減ると、それに応じて材木屋や金物屋、刃物屋といった下請けも減っていきます。店を畳んだり、食べられないからと子どもには継がせなかったり。
静岡は、家具の一大産地として、家具職人が新規で仕事を始めやすい土地だと言われてきました。それは、仕事をする上で欠かせない下請けが多く軒を連ねていたということでもあります。
しかし、現在、そして未来へと目を向けたときはどうでしょうか。

石川さんはそんな未来を憂えているように見えました。伝統ある産業である家具作りを、所謂「伝統産業」にしてはいけない。
地産地消が叫ばれている昨今、産業も地元のものを。それは産業を守るという意味だけではありません。

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使い手である私たちからもメリットがあります。それは、金鱗の家具がそうであるように、
「何かあったときにすぐ頼れる作り手がそこにいる」
という安心感です。
安い買い物ではない家具です。そのメリットは長年使っていく上で、必ず大きくなります。

「別にうちの家具が気に入らないって言うならいいんですよ。ただ、折角静岡にいるんだから、他の家具屋さんでいいから静岡の家具を買って欲しいんだよね。」
と気さくに語る石川さん。
この人になら、一生モノの家具をお願いしたい。そう思える、優しくも頼り甲斐のある横顔です。

金鱗では、毎年5月と10月にフェアを行っています。手造り家具と聞くとどうしても敷居が高いと感じる方は、そのタイミングを選んでみると入りやすいかもしれません。
家具を見て、とろろを食べて帰る。人を癒す土地、丸子でそんな休日を過ごしてみませんか。

【金鱗 詳細】

所在地:〒421-0106 静岡市駿河区北丸子2丁目38番9号
営業時間:【店舗】10:00~18:00 ほぼ無休
【工場】08:00~18:00 日曜・祝日定休
電話番号:TEL:054-201-2511 / FAX:054-259-6313
公式HP:http://www.kinrin.co.jp/index.html